奥歯のインプラントができないケースとは?代替治療も紹介
「奥歯にインプラントができないと言われて、どうしたらいいのか分からない」と悩んでいませんか?
せっかくしっかり噛めるようになりたいと思っていたのに、治療ができないと聞かされて戸惑う方は少なくありません。特に奥歯は食事のたびに大きな力がかかるため、治療法を誤ると今後の生活にも影響します。
しかし、インプラントが難しいケースでも、適切な理由を把握し、代わりとなる治療法を選べば快適な噛み心地を取り戻すことは十分可能です。この記事では、奥歯にインプラントができないと診断される主な理由をわかりやすく解説したうえで、骨造成やブリッジ、入れ歯などの代替治療の選択肢についても丁寧にご紹介します。
「奥歯の治療に悩んでいる」「インプラント以外の方法も知っておきたい」と感じている方にとって、治療法を選ぶための判断材料が得られる内容になっています。特に、歯科医院でインプラントを断られた経験のある方、費用や手術の負担が不安な方には、ぜひ最後まで読んでいただきたい内容です。
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奥歯のインプラント治療ができないケース
奥歯のインプラント治療は多くの患者にとって有効な選択肢ですが、すべてのケースで適応できるわけではありません。特に以下のような条件に当てはまる場合、治療の実施が難しくなることがあります。
・骨の高さが極端に足りない
・重度の糖尿病
・重度の歯周病
・心臓病、脳血管疾患、血液疾患など
・重度の喫煙者
・開口量が不足している
・口腔衛生状態が極端に悪い
・強い歯ぎしりや食いしばり
・顎の骨の成長が完了していない若年者
以下にそれぞれのケースについて詳しくご説明します。
骨の高さが極端に足りない
上顎の場合
上顎の奥歯の上部には「上顎洞(サイナス)」と呼ばれる空洞があります。
歯を抜いた後、その部分の骨は時間とともに吸収され、結果として上顎洞との距離が非常に近くなります。
通常、インプラントを支えるには少なくとも5~7mm程度の骨の厚みが必要ですが、この厚みを下回ると、人工歯根が安定せず脱落のリスクが高まります。
骨造成(サイナスリフトやソケットリフト)で対処できるケースもありますが、極端に骨量が不足していたり、上顎洞の形状が複雑であったりすると、処置そのものが困難になります。
また、持病や年齢により手術リスクが高まる場合は、インプラントを断念することがあります。
下顎の場合
下顎の奥には「下歯槽神経」という重要な神経が通っており、この神経を損傷すると、下唇や顎の感覚異常、まひといった後遺症につながる恐れがあります。
骨が極端に薄く、神経までの距離が短い場合には、通常の長さのインプラントは使用できません。
代替策としてショートインプラントや斜めに挿入する方法もありますが、それでも安全性が確保できない場合は、手術が適応外と判断されることがあります。
重度の糖尿病
糖尿病が重度になると、免疫力が低下し、細菌への抵抗力が弱まります。
手術後の傷口が治りにくく、感染症を起こす可能性が高くなります。さらに、血糖値が安定しない状態では、インプラントと骨がしっかり結合しないことがあり、せっかく治療をおこなっても早期に脱落する可能性があります。
血糖値が良好に管理されている方は治療可能なこともありますが、内科主治医と連携して治療計画を立てることが前提です。
インプラントを検討する際は、医科・歯科の両面での安全確認が欠かせません。
重度の歯周病
歯周病が進行すると、歯を支える骨(歯槽骨)が溶けてしまいます。
この骨の支えがないと、インプラントも同様に長く維持することが困難になります。
また、歯周病菌はインプラントにも感染し、インプラント周囲炎を引き起こします。
これは天然歯の歯周病よりも進行が早く、最悪の場合インプラントを除去しなければならなくなることもあります。
重度の歯周病が確認された場合は、まず歯周基本治療を徹底し、一定期間の経過観察後にインプラントの可否を判断します。
心臓病、脳血管疾患、血液疾患など
心筋梗塞や脳梗塞などの既往がある方や、抗凝固薬を服用中の方は、インプラント手術による身体的ストレスや出血リスクが高まります。
特に外科的な処置を要するインプラントでは、術中・術後のリスク管理が重要です。
血液の病気がある場合、止血が困難になるケースもあり、入院管理下でないと治療できない場合もあります。
安全を最優先するため、主治医との協議が必要で、総合病院や医科連携のある歯科医院での対応が推奨されます。
重度の喫煙者
喫煙による血流の悪化は、骨とインプラントの結合を妨げる大きな要因です。
特に1日に20本以上の喫煙歴がある方は、成功率が明らかに低下します。
ニコチンや一酸化炭素の影響で、歯茎の治癒力も低下し、術後の感染症リスクやインプラント周囲炎の発症率が高くなります。
禁煙ができない場合は、医師からインプラントを控えるよう助言されることが一般的です。
開口量が不足している
口が十分に開かない状態では、奥歯の部位に手術器具が届かず、インプラントの正確な位置決めや処置そのものが難しくなります。
顎関節症の症状がある方や、骨格的な構造で開口制限がある方は注意が必要です。
手術中に無理に口を開けると、関節や筋肉にダメージを与える可能性があるため、別の治療法を検討するケースもあります。
術前の検査で開口量を計測し、必要に応じて理学療法や装具での改善が試みられることもあります。
口腔衛生状態が極端に悪い
口腔内の清掃が不十分であると、プラークや歯石が蓄積し、歯周病やインプラント周囲炎の原因になります。
こうした衛生環境では、インプラント治療を行っても長期的な成功が望めません。
まずは歯磨き指導やスケーリングなどの初期治療を徹底し、患者自身のセルフケア意識が改善されることが前提となります。
定期的なメンテナンスに協力できない場合も、インプラントの適応から外れることがあります。
強い歯ぎしりや食いしばり
無意識におこなわれる歯ぎしりや食いしばりは、インプラント体に過度の力を加え、金属部分のゆるみや破損、骨の吸収を招く原因となります。
特に就寝中に強く噛みしめる癖がある方は注意が必要です。
ナイトガードの使用やボツリヌス治療などによって症状がコントロールできれば、インプラントが可能になる場合もあります。
ただし、これらの対応を怠ったまま治療をおこなうと、再治療や除去に至ることもあります。
顎の骨の成長が完了していない若年者
成長期の子どもや10代前半の若者は、顎の骨の発達が未完成です。
この状態でインプラントをおこなうと、周囲の骨が成長する過程でインプラントの位置がズレてしまい、噛み合わせや見た目に悪影響を及ぼします。
通常は、18歳以上で骨の成長が安定していることを確認したうえで、インプラントの適応が判断されます。
成長途中の段階では、ブリッジや入れ歯など、可逆的な治療法で一時的に対応することが一般的です。
奥歯のインプラントができない場合の対処法・代替治療
インプラント治療が難しいと診断されても、治療法がないわけではありません。
口腔内の状態に応じて、以下のような対応策が検討されます。
・骨造成(骨移植)などの外科処置
・ブリッジ
・部分入れ歯
・総入れ歯
・ショートインプラント・細いインプラント
骨造成(骨移植)などの外科処置
骨の厚みや高さが足りない場合は、外科的処置で骨の量を増やすことによって、インプラントが可能になることがあります。
以下のような方法が行われています。
サイナスリフト(上顎洞挙上術)
上顎の奥歯の上にある空洞(上顎洞)との距離が短くなっている場合、サイナスリフトが行われます。
これは上顎洞の粘膜を持ち上げて、その空間に人工骨を詰める手術です。
3mm以下の骨しかない場合でも対応可能な技術で、骨の高さを6〜10mm程度増やすことが目標とされています。
術後の腫れや出血に配慮し、経験豊富な歯科医師の管理のもとで行われます。
ソケットリフト(上顎洞底挙上術)
骨の厚みが比較的残っている場合には、ソケットリフトが選ばれます。
インプラントを埋入する穴から、専用器具で上顎洞の底を少しだけ押し上げ、人工骨を詰める方法です。
サイナスリフトに比べて侵襲が少なく、術後の腫れも軽度で済むことが多いため、患者の身体的負担が少ない点が利点です。
GBR法(骨誘導再生法)
歯周病などで骨が部分的に失われている場合には、GBR(Guided Bone Regeneration)法が用いられます。
人工膜(メンブレン)で欠損部分を覆い、周囲の組織が入り込まないようにして骨の再生を促します。
局所的な骨欠損にも対応でき、他の骨造成法と組み合わせて行われることもあります。
ブリッジ
歯を失った箇所の両隣の歯を削って支台とし、橋渡しのように人工歯を装着する方法です。
固定式で装着感も自然に近く、短期間での治療が可能です。
ただし、健康な歯を削ることにより、それらの歯の寿命を縮めるリスクがあります。
また、削った歯が神経を取る必要がある場合は、将来的な破折や再治療のリスクも考慮する必要があります。
部分入れ歯
残っている歯にバネ(クラスプ)をかけて装着する取り外し式の義歯です。
比較的費用を抑えながら、短期間で機能回復が期待できる点が利点です。
毎日の取り外しや清掃が必要で、慣れるまで違和感を感じやすいという特徴もあります。
噛む力が天然歯に比べて弱くなりやすく、バネをかける歯に負担がかかる点も留意が必要です。
総入れ歯
歯がすべて無くなっている場合は、総入れ歯が基本的な治療となります。
上顎は粘膜全体に吸着させて安定させ、下顎は骨の形状によって安定性が左右される傾向があります。
保険適用の範囲でも治療が可能ですが、見た目や噛み心地の面では限界があります。
最近では、数本のインプラントを埋入して総入れ歯を固定する「インプラントオーバーデンチャー」も選択肢のひとつとして注目されています。
ショートインプラント・細いインプラント
通常より短い、または細いインプラントを使用することで、骨の厚みや幅が不足している部位にも対応できる場合があります。
骨造成を避けたい場合や、高齢者・持病を抱える方にも適応されやすい方法です。
ただし、通常のインプラントと比較すると長期的な安定性や耐久性に課題があるとされ、症例の選定と医師の技術が重要になります。
奥歯をインプラントにするメリットとデメリット
奥歯の治療でインプラントを選ぶことは、咀嚼機能の回復や見た目の自然さを保つうえで非常に効果的です。
多くの利点がありますが、同時に注意すべき点も存在します。以下では主なメリットとデメリットを項目ごとに詳しくご紹介します。
メリット
・他の健康な歯を傷つけない
・審美性が高い
・天然歯に近い噛み心地
・発音への影響が少ない
・顎の骨の吸収を抑制
デメリット
・費用が高額
・治療期間が長い
・骨造成手術が必要
メリット
他の健康な歯を傷つけない
インプラント治療は、失われた歯の部分だけをピンポイントで補う方法です。
ブリッジのように隣接する歯を削って土台にする必要がなく、周囲の天然歯に負担がかかりません。
健康な歯をそのまま温存できるため、将来的なむし歯や歯の破折のリスクを軽減できます。
特に奥歯は咀嚼力が大きくかかる部位なので、隣の歯のダメージを防ぐことは大きなメリットです。
審美性が高い
インプラントに装着する人工歯(上部構造)は、セラミックなどの高品質な素材で作られ、色や透明感を周囲の歯に合わせて調整できます。
前歯だけでなく、口を大きく開けたときに奥歯が見える方でも、見た目が自然で違和感がありません。
金属を使わないジルコニア製の人工歯であれば、金属アレルギーの方にも安心です。
天然歯に近い噛み心地
人工歯根が顎の骨と直接結合することで、食べ物をしっかり噛む力を再現できます。
入れ歯のようにずれたり外れたりする心配もなく、煎餅やステーキなどの硬いものでも快適に食べられます。
神経を通じた感覚はないものの、噛んだときの力加減が把握しやすく、違和感が少ない点が魅力です。
発音への影響が少ない
入れ歯と比べて口腔内のスペースをとらないため、舌の動きを妨げず、滑舌や発音への影響がほとんどありません。
特に「サ行」「タ行」などの発音で違和感を感じていた方にとって、会話がしやすくなるのは大きな利点です。
仕事や接客業で人と話す機会が多い方にも向いています。
顎の骨の吸収を抑制
歯を失うと、その部分の顎の骨には刺激が加わらなくなり、骨が次第に痩せていきます。
骨が痩せると顔がこけたような印象になり、見た目年齢が上がって見えることもあります。
インプラントは噛む力が骨に伝わるため、骨の吸収を抑える効果が期待できます。
長期的に顔の輪郭や口元の張りを保ちたい方にとっても適した治療法です。
デメリット
費用が高額
インプラント治療は公的医療保険が適用されない自由診療であるため、費用が高くなります。
1本あたり30万円〜50万円前後が相場であり、症例によっては複数本の治療や骨造成などの追加処置が必要となることもあります。
メンテナンス費用や定期検診も含めて、長期的にみると一定の費用負担が発生します。
治療を検討する際には、費用面を明確に説明してくれる歯科医院を選ぶことが大切です。
治療期間が長い
インプラントが骨としっかり結合するまでには、3~6か月程度の治癒期間が必要です。
手術は1回または2回に分けておこなうことがあり、検査や仮歯の製作などを含めると、治療完了まで半年以上かかることもあります。
特に忙しい方や、短期間で治療を終えたい方には、スケジュール調整が必要になります。
骨造成手術が必要
骨の厚みや高さが不十分な場合には、インプラントを埋める前に骨を補う手術(骨造成)が求められます。
具体的には、サイナスリフトやGBR法などがあり、手術時間や回復期間が延びる要因となります。
手術に対する不安を感じる方も多く、事前のカウンセリングや説明が重要です。また、持病を抱えている方や喫煙者などは、術後の回復に注意が必要です。
奥歯にはインプラントがおすすめ
奥歯は日々の食事で強い咀嚼力が必要な部分であり、しっかりと機能回復することが健康維持に直結します。
インプラントは天然の歯に近い構造と耐久性を持ち、他の歯を守りながら快適な噛み心地を実現できます。
見た目の自然さや話しやすさ、骨の健康を保つ点でもメリットが多く、奥歯の欠損には非常に適した選択肢といえます。
費用や治療期間の長さといったハードルもありますが、それ以上に機能性や生活の質に大きく関わる治療法です。
まずは専門の歯科医院で相談し、自身の状態や希望に合った治療計画を立てることが重要です。
まとめ
奥歯のインプラントができないと診断された場合でも、原因を正しく理解し、自分に合った治療法を選ぶことが大切です。
骨の量が不足しているケースには骨造成といった外科処置が検討され、ほかにもブリッジや入れ歯、ショートインプラントなど、状態に応じた選択肢があります。
噛む力をしっかり取り戻すためにも、歯科医師とよく相談しながら、長期的に安定した口腔環境を目指しましょう。
監修者 山田 嘉宏(やまだ よしひろ)
医療法人社団隆嘉会 ソレイユデンタルクリニック 理事長
1990年 昭和大学歯学部 卒業
1990~1992年 東京医科歯科大学補綴科 勤務
1992~1993年 茨城県友部歯科診療所 勤務
1993~1999年 品川区共立歯科 分院長 勤務
1999~2003年 よしひろ歯科クリニック 開院
2003年 医療法人社団隆嘉会 よしひろ歯科クリニック 開院
2014年 医療法人社団隆嘉会ソレイユデンタルクリニック 開院
資格
・厚生労働省認定歯科医師臨床研修指導医
・日本口腔インプラント学会専門医
・IDIA(国際歯科インプラント協会/旧 ADIA(アメリカ歯科インプラント協会))専門医/指導医
・DGZI(ドイツ口腔インプラント学会)専門医/指導医
・ISOI(国際口腔インプラント学会)専門医/指導医
・ICOI(国際口腔インプラント学会)認定医
・日本臨床歯周病学会歯周病認定医
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