奥歯のインプラント治療が不要なケース|放置のリスクと代替治療を紹介
奥歯を失ったままでも、「特に支障がないから」とそのままにしていませんか?忙しさや費用の問題から、インプラント治療をためらう方も少なくありません。しかし、何もせずに放置していると、思わぬトラブルを引き起こすことがあります。
インプラントは確かに優れた治療法ですが、すべてのケースで必要とは限りません。年齢や健康状態、骨の状態などによっては、他の選択肢が適していることもあります。重要なのは、「本当に今、インプラントが必要かどうか」を正しく判断することです。
この記事では、奥歯のインプラントが不要とされる代表的なケースを紹介しつつ、治療を放置した場合に起こりうるリスクや、インプラント以外の治療法についても詳しく解説します。
奥歯を失ったままにしている方や、インプラントに踏み切れず悩んでいる方にとって、この記事を読むことでご自身の状態に合った選択肢が見つかるはずです。
特に、費用や体への負担に不安を感じている中高年の方には、ぜひ最後までご覧いただきたい内容です。
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奥歯のインプラント治療が不要なケース
奥歯を失った場合でも、必ずしもインプラントを選択する必要はありません。
状況によっては、インプラント以外の治療法を選んだ方が身体的・経済的な負担が少なく、日常生活への影響も抑えられることがあります。
以下のような条件に当てはまる方は、インプラント治療が不要と判断される可能性があります。
・高齢である
・全身疾患がある
・顎の骨が不足している
・費用が足りない
・噛み合わせに問題がある
・隣接する歯の状態が悪い
・親知らずの場合
それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。
高齢である
高齢者にとっては、インプラント治療が身体的に大きな負担となることがあります。
特に75歳以上の方では、全身麻酔や長時間の外科手術が体力的に厳しくなるケースも見受けられます。
さらに、加齢に伴い糖尿病や骨粗しょう症などの慢性疾患を抱えていることが多く、術後の回復が遅れるリスクも高まります。
そのため、主治医や歯科医と相談のうえ、取り外しが可能で管理がしやすい部分入れ歯など、負担の少ない治療を優先する選択が一般的です。
生活の質や本人の希望を踏まえて治療方針を決定することが大切です。
全身疾患がある
持病がある場合は、インプラント治療が不適応となることがあります。
たとえば、糖尿病のコントロールが不十分な方は、感染のリスクが高く、インプラントが骨と結合しにくい傾向があります。
心臓病を抱えている方や、抗血栓薬を常用している方は、手術中の出血が止まりにくいといった問題もあります。
また、がんの治療で顎に放射線を照射したことがある方も、骨の治癒力が著しく低下している可能性があり、インプラントの安定性に支障をきたすことがあります。
全身の健康状態と、服用中の薬の影響を歯科医と十分に共有することが欠かせません。
顎の骨が不足している
インプラントを支えるには、十分な顎の骨量と密度が必要です。
しかし、歯を失って長期間放置していると、骨が吸収されてしまい、インプラントを固定するための土台が足りなくなることがあります。
このような場合、骨造成術という補助手術をおこなえば治療は可能ですが、手術の回数が増え、費用や期間、身体への負担が大きくなります。
そのため、患者の年齢や健康状態によっては、入れ歯やブリッジといった他の治療法を検討することも一案です。
費用が足りない
インプラント治療は、1本あたり30万円から50万円程度かかることが一般的で、保険が適用されない自由診療となるため、経済的な負担が大きくなります。
特に複数本を治療する場合は、総額で100万円を超えるケースもあります。
そのため、予算の関係でインプラントを見送る方も少なくありません。
費用を抑えたい場合は、保険が適用される部分入れ歯や、ブリッジなどを選ぶことで、経済的な負担を軽減できます。
歯科医院によっては分割払いや医療ローンにも対応しているため、事前に費用面の相談をしておくと安心です。
噛み合わせに問題がある
噛み合わせに問題がある場合、インプラントに過剰な力が加わると、破損や脱落のリスクが高まります。
たとえば、顎のズレや、上下の歯の接触バランスが悪い状態でインプラントを入れると、治療後に痛みや違和感が生じることがあります。
このようなケースでは、まず噛み合わせの調整や矯正治療が必要になる場合もあります。
治療の複雑化や長期化を避けるため、入れ歯などで様子を見る選択肢も現実的です。
噛み合わせは口全体の健康にも影響するため、慎重に診断する必要があります。
隣接する歯の状態が悪い
インプラントを埋入する位置の隣接歯に、虫歯や歯周病があると、インプラントにも悪影響を及ぼすことがあります。
たとえば、歯周病菌がインプラント周囲に拡がり、インプラント周囲炎という炎症を引き起こすと、せっかく埋入したインプラントが抜け落ちる可能性もあります。
このような場合は、まず隣接歯の治療を優先し、口腔環境を整えたうえで適切な治療法を検討することになります。
隣の歯を利用するブリッジや、独立して装着できる入れ歯も選択肢の一つとなります。
親知らずの場合
親知らずが抜けた場合、多くの場合でインプラント治療は不要とされます。
理由は、親知らずはそもそも噛み合わせに関与する割合が少なく、日常生活で大きな支障を感じることが少ないからです。
また、親知らずの部位は骨の厚みが足りなかったり、埋伏していたりすることも多く、手術の難易度が高くなる傾向があります。
これらの理由から、医師が特に必要と判断しない限り、親知らずのインプラント治療は避けられることが一般的です。
奥歯がないまま放置するリスク
奥歯を失ったままにすると、見た目の変化だけでなく、口腔内や全身の健康にも悪影響が生じる可能性があります。
特に以下の点には注意が必要です。
・噛み合わせの悪化と歯並びの乱れ
・虫歯や歯周病のリスク増加
・残っている歯への負担増
・骨の吸収(顎の骨が痩せる)
・消化器への負担
・発音の変化
・審美性の問題
それぞれのリスクについて、詳しくご紹介します。
噛み合わせの悪化と歯並びの乱れ
奥歯を失った状態を放置すると、噛み合わせや歯並びが崩れてしまいます。
空いたスペースに隣の歯が傾いたり、向かい合う歯が伸びてくることで、全体のバランスが乱れてしまいます。
上下の歯がうまく噛み合わなくなると、食事中に一部の歯に過度な力がかかり、歯の摩耗や破折のリスクも高まります。
噛み合わせのズレが長期間続くと、顎関節にも負担がかかり、顎の痛みや開閉時の異音などの不快な症状を引き起こす場合があります。
虫歯や歯周病のリスク増加
奥歯の欠損で生じたスペースが原因で歯が傾いたり回転したりすると、歯と歯の間にすき間ができやすくなります。
歯並びの乱れが進むと、歯ブラシが届きにくくなり、食べかすやプラークが残りやすくなります。
結果として、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
特に歯周病は、気づかないうちに進行してしまうことがあり、最終的に歯を支える骨まで影響を受ける恐れがあります。
残っている歯への負担増
奥歯がないと、咀嚼の機能を他の歯が補おうとするため、残っている歯への負荷が大きくなります。
特に反対側の奥歯や前歯に無理な力が加わりやすくなり、詰め物が外れたり、歯がすり減ったり、折れたりするリスクが上昇します。
また、過剰な力が継続すると歯根膜や神経に刺激が加わり、知覚過敏の原因にもなります。
こうした負担が積み重なることで、結果的に健康な歯まで失う可能性が出てきます。
骨の吸収(顎の骨が痩せる)
歯が抜けた部分の顎の骨は、噛む刺激が加わらなくなることで徐々に痩せていきます。
これは「骨吸収」と呼ばれ、放置すればするほど顕著になります。
骨が痩せてしまうと、将来的にインプラント治療を検討する際に、骨を補う手術が必要になることもあります。手術は費用や期間、身体への負担も増えるため、早期の対応が重要です。
さらに、顎の骨が減ることで口元のハリが失われ、ほうれい線が深くなるなど、見た目にも老けた印象を与えることがあります。
消化器への負担
奥歯がなくなると、食べ物をしっかりと噛み砕くことが難しくなります。
咀嚼が不十分なまま飲み込むと、大きな食塊がそのまま胃腸に送られるため、消化器への負担が大きくなります。
消化不良や胃もたれを起こしやすくなるほか、腸内での栄養吸収にも影響が出る可能性があります。
食生活の質を維持するためにも、奥歯の咀嚼機能は非常に重要です。
発音の変化
奥歯がなくなることで、空気の流れや舌の動きが変わり、発音に違和感が出ることがあります。
特に「さ行」や「た行」などは、歯と舌の位置関係が微妙に変化することで、発音が不明瞭になることがあります。
日常会話や電話対応の場面で、自分の声に違和感を覚える人もいます。
特に接客業や講師業など、話すことが仕事の一部である場合は、職業上の不都合にもつながりかねません。
審美性の問題
奥歯が見えにくい位置にあるとはいえ、大きく口を開けたときや笑ったときに、欠損部が見える場合があります。
また、奥歯を失ったことで歯並びが崩れ、前歯の位置や形にも影響が出ることがあります。
全体のバランスが乱れることで、顔の印象まで変わってしまうこともあるため、審美面を気にする方にとっては大きな問題です。
若々しさを保つうえでも、奥歯の重要性は軽視できません。
インプラント以外の奥歯の治療方法
インプラント以外にも、奥歯を補うための治療法は複数あります。
各方法には特性や制限があり、口腔内の状況や費用面の希望によって適した選択肢は異なります。以下の方法が代表的です。
・ブリッジ
・入れ歯(部分入れ歯)
・歯牙移植(自家歯牙移植)
・差し歯(クラウン)
それぞれの特徴と利点・欠点を確認していきましょう。
ブリッジ
ブリッジは、両隣の歯を土台として連結する人工歯を装着する治療法です。
固定式の構造であるため装着後の安定感があり、自然に近い噛み心地が得られる点が特徴です。
ブリッジのメリット
自分の歯のような噛み心地が得られる点が大きな利点です。
固定式のため、装着後の違和感が少なく、見た目も比較的自然に仕上がります。
治療期間が比較的短く済む点も評価されています。条件を満たせば保険が適用されることがあり、費用面での負担が抑えられる場合もあります。
ブリッジのデメリット
支えにする歯を削る必要があるため、健康な歯にダメージを与えてしまいます。
土台となる歯に常に力が加わるため、長期的にはその歯の寿命が短くなる可能性があります。
失った歯の数が多かったり、隣接する歯が弱っている場合は適用が難しくなることもあります。
入れ歯(部分入れ歯)
入れ歯は、取り外し可能な人工歯を装着する治療方法です。
金属のバネなどで周囲の歯に引っかけることで固定されます。
複数の歯が抜けた場合でも対応しやすいのが特徴です。
入れ歯のメリット
外科処置が必要ないため、体への負担が少なく済みます。
保険適用の範囲で作成できるものもあり、治療費を抑えたい方に適しています。複数の欠損部位にも対応できる点や、取り外して洗浄できる点も利便性の高さにつながります。
入れ歯のデメリット
噛む力が天然歯よりも弱くなる傾向があります。
使用中にずれやすい、バネが目立つ、毎日の手入れが必要といった不便を感じることもあります。口の中に異物感が残りやすく、慣れるまでに時間がかかる場合もあります。
歯牙移植(自家歯牙移植)
歯牙移植とは、親知らずなどの不要な歯を、欠損した部分へ移し替える治療法です。
自分自身の歯を利用するため、人工歯では得られない自然な感覚が期待できます。
歯牙移植のメリット
移植に使用するのが自身の歯であるため、生体との適合性が高く、装着後の違和感が少ない傾向にあります。
うまく定着すれば、通常の歯とほとんど変わらない咀嚼機能が回復できます。人工材料を使わない点に安心感を持つ方もいます。
歯牙移植のデメリット
移植できる歯がない場合は、この治療は選択肢から外れます。
治療には手術が伴い、骨への定着を待つ期間が必要となります。さらに、完全に成功するかどうかは個人差があり、定着しない可能性もあります。
差し歯(クラウン)
差し歯は、歯の根が残っている場合に、その上に人工の歯を被せて補う方法です。
根の状態が良好であれば、比較的簡単に治療が完了します。
差し歯のメリット
歯根が生かせるため、抜歯の必要がなく身体的負担が少ない治療方法です。
装着感が自然で、見た目も周囲の歯と調和しやすい仕上がりになります。
使用する素材によっては審美性を重視した対応も可能です。
差し歯のデメリット
歯の根に損傷や感染があると、この治療は適用できません。
素材によっては保険対象外となり、費用が高額になることもあります。
また、根の状態を維持するためには定期的なメンテナンスが欠かせません。
奥歯をインプラントにするべき理由
奥歯をインプラントにすることで、口腔内の健康や見た目を長く保ちやすくなります。
失った歯を補う方法の中でも、インプラントは特に優れた機能性と安定性が期待できます。具体的には以下のような理由があります。
・限りなく天然歯に近い噛む機能を取り戻せるため
・残っている健康な歯を守れるため
・顎の骨の吸収(痩せること)を防げるため
・長期的な安定性と耐久性が期待できるため
・審美性に優れているため
それぞれの理由について詳しく説明します。
限りなく天然歯に近い噛む機能を取り戻せるため
インプラントは顎の骨にしっかりと固定されるため、天然歯とほぼ同じ感覚で咀嚼できます。
食べ物をしっかり噛み砕けることで、食事の満足度が高まるだけでなく、胃腸への負担も減らせます。
硬いものや繊維質の多い食品も問題なく食べられるようになり、栄養バランスを保ちやすくなります。
違和感が少なく、ズレや沈み込みといった不快感もほとんど感じません。
入れ歯やブリッジでは難しかった自然な噛み心地を得られる点が大きな魅力です。
残っている健康な歯を守れるため
インプラントは周囲の歯に依存せず単独で機能するため、他の歯に負担をかけることがありません。
ブリッジのように隣の歯を削ったり、入れ歯のようにバネで固定したりする必要がないため、健康な歯をそのまま保つことができます。
支えとなる歯を削る治療法と比べて、長期的に見て他の歯の寿命を延ばしやすいと考えられています。
歯全体のバランスを崩さずに補綴ができる点が、インプラントの大きな特長です。
顎の骨の吸収(痩せること)を防げるため
インプラントは人工歯根が顎の骨に埋め込まれ、噛む刺激が直接骨に伝わります。
この刺激が加わることで、顎の骨が痩せにくくなります。
歯を抜けたままにしておくと、骨への刺激が失われ、時間の経過とともに骨量が減少します。
特に奥歯は噛む力が強くかかる部位であるため、骨吸収が進行しやすい傾向にあります。
骨が減ってしまうと、顔の輪郭が変化し、ほうれい線が深くなったり、口元がしぼんだ印象になったりすることもあります。
インプラントはそのような変化を防ぐ有効な手段となります。
長期的な安定性と耐久性が期待できるため
インプラントは適切なケアを行えば、非常に長期間にわたって安定した状態を維持できます。
10年を超えて使用できるケースも多く、なかには20年以上問題なく使い続けている方もいます。
定期的なメンテナンスは必要ですが、顎の骨としっかり結合しているため、ぐらつきや脱落の心配が少ないのが特徴です。
毎日の生活で安心して使える補綴方法として、耐久性の高さは大きな利点といえます。
審美性に優れているため
インプラントの人工歯は、周囲の歯と調和するように色や形を細かく調整できます。
天然歯と見分けがつかないほど自然な仕上がりが可能なため、大きく笑ったときにも見た目の違和感がありません。
金属のバネが見えてしまう部分入れ歯や、土台の歯を削って形が変わるブリッジとは異なり、美しい口元を保ちたい方にとっても理想的な治療法です。
見た目を大切にしたい人にとって、インプラントは機能性だけでなく美しさでも優れています。
まとめ
奥歯を失った場合でも、すべてのケースでインプラント治療が必要とは限りません。
高齢であったり、全身疾患があったりする場合は、他の治療法が適していることもあります。
ただし、奥歯を放置していると噛み合わせの悪化や骨の吸収など、口腔内や全身に影響を及ぼすおそれがあるため注意が必要です。
ブリッジや入れ歯、歯牙移植など、インプラント以外にも選択肢はあります。
自身の体調や生活スタイルに合った治療法を選ぶためにも、まずは歯科医に相談し、適切な判断をおこなうことが大切です。
監修者 山田 嘉宏(やまだ よしひろ)
医療法人社団隆嘉会 ソレイユデンタルクリニック 理事長
1990年 昭和大学歯学部 卒業
1990~1992年 東京医科歯科大学補綴科 勤務
1992~1993年 茨城県友部歯科診療所 勤務
1993~1999年 品川区共立歯科 分院長 勤務
1999~2003年 よしひろ歯科クリニック 開院
2003年 医療法人社団隆嘉会 よしひろ歯科クリニック 開院
2014年 医療法人社団隆嘉会ソレイユデンタルクリニック 開院
資格
・厚生労働省認定歯科医師臨床研修指導医
・日本口腔インプラント学会専門医
・IDIA(国際歯科インプラント協会/旧 ADIA(アメリカ歯科インプラント協会))専門医/指導医
・DGZI(ドイツ口腔インプラント学会)専門医/指導医
・ISOI(国際口腔インプラント学会)専門医/指導医
・ICOI(国際口腔インプラント学会)認定医
・日本臨床歯周病学会歯周病認定医
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