奥歯をインプラントにするデメリットとメリットを解説
奥歯を失ってしまった方にとって、インプラント治療は選択肢の一つとして非常に魅力的です。しかし、インプラント治療にはメリットだけでなくデメリットも存在するため、慎重に選択をすることが重要です。「治療費が高額だと聞いた」「手術に不安がある」「治療後のケアが大変そう」といった悩みを抱えている方も少なくありません。
本記事では、奥歯のインプラントに関するメリットとデメリットをしっかりと解説します。インプラント治療の特徴や、治療後の生活への影響についても詳しく触れることで、安心して治療を受けるために必要な情報を提供します。
この記事を読めば、インプラントのメリット(天然の歯に近い噛み心地や見た目、健康な歯への負担がないことなど)やデメリット(治療費や治療期間の長さ、外科手術のリスクなど)について明確に理解でき、どのように治療を進めるべきかを自信を持って決められるようになります。特に、奥歯のインプラントを検討している方や、治療を受けるべきか悩んでいる方にとって有益な情報をまとめましたので、ぜひご覧ください。
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奥歯の位置と役割
奥歯は、口の奥に位置し、食べ物を噛み砕く重要な役割を担っています。
成人の口の中には、通常、奥歯は合計16本存在し、大臼歯と小臼歯がそれぞれ特定の機能を果たしています。これらの歯は消化を助けるだけでなく、全身の健康にも影響を与えるため、非常に重要です。
奥歯の位置
奥歯は、口の奥に位置し、通常は上下左右にそれぞれ3本の大臼歯と2本の小臼歯が並んでおり、合計16本の奥歯が存在します。小臼歯は犬歯の後ろにあり、食べ物を切り分ける役割を担っています。
一方、大臼歯はさらに奥に位置し、食べ物をすりつぶす役割を持っています。また、親知らず(第三大臼歯)は一番奥に位置し、成人後に生えることが一般的ですが、場合によっては抜歯が推奨されることもあります。
奥歯の役割
奥歯は、食べ物をすりつぶし、消化を助ける最も重要な歯です。特に、大臼歯はその大きな表面積と多くの溝を持ち、食べ物を細かくするための優れた構造を備えています。この機能により、胃腸への負担を軽減することができます。さらに、奥歯は噛み合わせを安定させるため、歯列全体の健康を保ち、他の歯への負担を軽減します。
奥歯をインプラントにするデメリット
奥歯のインプラント治療は多くの利点がありますが、いくつかのデメリットも伴います。
・治療費が高額
・治療期間が長い
・外科手術が必要
・骨造成が必要な場合がある
・インプラント歯周炎のリスク
・メンテナンスが必須
・失敗のリスクがある
・アレルギーがでる可能性
・噛み合わせの調整の難しさ
・神経や血管を損傷するリスク
治療費の高さや治療期間の長さ、外科手術のリスクなど、慎重に考慮すべき要素が多いです。さらに、アレルギーやインプラント歯周炎のリスク、噛み合わせ調整の難しさなども考慮しなければなりません。
これらのデメリットを理解し、事前にしっかりと準備することが重要です。
治療費が高額
インプラント治療は、一般的に保険適用外であるため、他の歯科治療と比較して高額になる傾向があります。特に奥歯の場合、治療が複雑になることが多いため、追加の費用が発生することもあります。
例えば、骨の状態が良好でない場合、骨造成手術が必要になることがあります。これにより、治療費はさらに増加することがあります。
また、インプラント体、アバットメント、上部構造(人工歯)など、個別の部品にかかる費用も含めると、トータルの治療費は相当な額に達する場合があります。そのため、治療を開始する前にしっかりと費用を確認し、予算を立てることが重要です。
治療期間が長い
インプラント治療は、インプラント体を顎の骨に埋め込んだ後、骨との結合(オステオインテグレーション)に数ヶ月を要します。
この期間は通常3ヶ月から6ヶ月程度ですが、骨の状態や個人差によってさらに長期間かかることがあります。治療期間が長くなると、その分治療を受ける際の体力的・精神的な負担が増すため、患者にとっては忍耐が必要です。
さらに、上部構造(人工歯)の装着にも時間がかかり、治療が完了するまでに数回の通院が必要となります。治療の進行状況によっては、再度手術が必要になることもあります。
外科手術が必要
インプラント治療は外科的な手術を伴うため、一定のリスクを伴います。特に奥歯のインプラントは、前歯に比べて手術の難易度が高くなることが多いです。
奥歯の周辺には解剖学的な制約が多く、上顎洞や下顎管が近くに存在しています。そのため、手術中にこれらの構造に損傷を与えるリスクがあります。
また、手術後に感染症が発生したり、出血が止まらなかったりする場合も考えられます。手術後の回復には時間がかかることが多く、痛みや腫れが生じることがあります。術後のケアや、感染症予防のための対策が必要となります。
骨造成が必要な場合がある
奥歯のインプラント治療では、骨の状態が不十分な場合、骨造成手術が必要となることがあります。特に、上顎洞や下顎管などの解剖学的構造が近接しているため、骨が不足しているとインプラントを支えるための十分な骨量を確保できません。
このような場合、骨を追加するための手術(骨造成)が行われます。骨造成手術には、人工骨を使用する方法や、患者自身の骨を使う方法がありますが、いずれも治療費が増加し、治療期間も延びる可能性があります。さらに、骨造成後にインプラントがしっかりと定着しないリスクもあります。
インプラント歯周炎のリスク
インプラント歯周炎は、インプラント周囲の歯肉に炎症が生じる病気です。この炎症が進行すると、インプラントが緩んだり、最終的には脱落することもあります。
インプラント歯周炎は、適切なケアを怠ると発症することが多いため、治療後のセルフケアが非常に重要です。毎日のブラッシングやフロスを使った清掃に加え、定期的に歯科医院でのチェックを受けることが推奨されます。
もし炎症が起きた場合は、早期に対処することでインプラントの寿命を延ばすことが可能です。
メンテナンスが必須
インプラントは天然の歯と同じように、定期的なメンテナンスが欠かせません。インプラント周囲の清掃が不十分だと、インプラント歯周炎が発生し、最終的にはインプラントが脱落する可能性があります。
定期的に歯科医院でのチェックを受け、インプラントの状態を確認することが重要です。また、食べ物の粒子がインプラント周囲に残ると、細菌が繁殖しやすくなるため、日々のケアも十分に行わなければなりません。
メンテナンスを怠ると、インプラントの寿命が短くなるだけでなく、治療の成功率にも影響を与える可能性があります。
失敗のリスクがある
インプラント治療には失敗のリスクも伴います。インプラントが骨としっかり結合しない場合や、手術後に感染症が発生した場合、インプラントが取り外されることがあります。
また、インプラントが長期間使用される中で、周囲の歯茎が退縮してインプラントが不安定になることもあります。インプラント治療が成功するためには、術後のメンテナンスや定期的なチェックが重要です。
アレルギーがでる可能性
インプラントの材料に対してアレルギー反応を示す場合があります。特にチタンを使用したインプラントでは、稀にアレルギー反応が起こることがあります。
アレルギー反応が発生すると、インプラント周囲が炎症を起こしたり、痛みを感じたりすることがあります。治療前にアレルギーの有無を確認し、必要に応じて適切な材料を選ぶことが求められます。
噛み合わせの調整の難しさ
奥歯は、食べ物を噛み砕くために非常に強い噛み合わせを必要とします。そのため、インプラントの噛み合わせの調整は慎重に行う必要があります。
噛み合わせが適切でない場合、顎関節に過度の負担がかかり、顎の痛みや頭痛、さらにはインプラントや上部構造の破損を引き起こす可能性があります。インプラント治療を受ける際には、専門的な噛み合わせの調整が求められます。
神経や血管を損傷するリスク
特に下顎の奥歯にインプラントを埋め込む場合、下顎管という神経や血管が近くを走っています。この神経や血管を損傷すると、痛みやしびれ、出血が生じる可能性があります。
事前に歯科用CTを使用して神経や血管の位置を確認し、慎重に手術を行うことが重要です。このようなリスクを最小限に抑えるためには、熟練した歯科医師による手術が不可欠です。
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奥歯のインプラントを検討する際の注意点
奥歯のインプラントを検討する際には、慎重に選択を行うことが重要です。
・歯科医師の経験と技術を確認する
・CT撮影による精密検査を受ける
・十分な説明とカウンセリングを受ける
・他の治療法との比較をする
治療を始める前に、信頼できる歯科医師を選び、治療方法やリスクについて十分な情報を得ることが大切です。インプラント治療は長期的な影響を及ぼすため、事前の準備がその後の結果に大きく影響します。
歯科医師の経験と技術を確認する
奥歯のインプラント治療は、前歯よりも難易度が高いことがあります。そのため、歯科医師の経験と技術を確認することが非常に重要です。
インプラント治療において、精密な手術と正確な噛み合わせの調整が求められるため、十分な実績を持つ歯科医師を選ぶことで、治療の成功率を高めることができます。
治療前に医師の過去の症例や治療法に対するアプローチを確認し、信頼できる歯科医院を選びましょう。
CT撮影による精密検査を受ける
インプラント治療を行う前に、歯科用CTを使って精密な検査を受けることは非常に重要です。
CT撮影では、顎の骨の状態や神経、血管の位置を確認することができ、手術のリスクを最小限に抑えるために必要な情報を得ることができます。
特に奥歯のインプラントでは、神経や血管が近くにあるため、事前に詳細な検査を行い、安全な手術計画を立てることが欠かせません。
十分な説明とカウンセリングを受ける
インプラント治療には、治療費や治療期間、リスクなどさまざまな要素が関わります。事前に歯科医師から十分な説明とカウンセリングを受けることが非常に重要です。
治療のメリットやデメリットを理解し、納得した上で治療を受けることで、安心して治療に臨むことができます。また、インプラント治療後のメンテナンスや注意点についても説明を受け、長期的に健康を維持するための準備をしましょう。
他の治療法との比較をする
インプラント治療以外にも、ブリッジや入れ歯などの治療法があります。それぞれの治療法にはメリットとデメリットがあり、患者自身の生活スタイルや口腔の状態によって最適な治療法が異なります。
インプラントが最適な選択肢かどうかを判断するためには、他の治療法との比較を行い、自分にとって最も適した治療方法を選ぶことが大切です。治療費や治療期間、メンテナンスの手間を考慮し、慎重に選択しましょう。
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・奥歯のインプラント治療が不要なケース|放置のリスクと代替治療を紹介
奥歯を失うと起きるデメリット
奥歯を失うことにはさまざまなデメリットがあります。
・咀嚼機能の大幅な低下
・噛み合わせのバランスが崩れる
・顎関節への負担や全身への影響
・顔貌の変形と精神的な影響
咀嚼機能が低下し、噛み合わせのバランスが崩れることで、日常生活において不便を感じるようになります。
さらに、顎関節に負担がかかり、全身の健康にも影響を与えることがあります。見た目や精神面にも悪影響を与える可能性があるため、奥歯を失った場合は早期の対処が求められます。
咀嚼機能の大幅な低下
奥歯は、食べ物を細かくすりつぶす重要な役割を担っています。奥歯を失うと、その機能が失われ、食べ物を十分に噛むことができなくなります。
これにより、消化不良を起こしやすくなるほか、固いものや繊維質の多い食材を避けるようになり、食事の楽しみが減少します。
また、噛み合わせが不完全になることで、栄養が偏りやすくなることもあり、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
噛み合わせのバランスが崩れる
歯は全体でバランスを取っており、奥歯を失うとそのバランスが崩れます。奥歯がないと、隣接する歯が傾き、上下の歯が伸びることがあります。
これにより、噛み合わせが狂い、残った健康な歯に過剰な負担をかけることになります。その結果、歯周病や虫歯、さらには歯の破折など、歯の健康を損なう原因となることが多いです。奥歯を失うことは、歯全体に対するドミノ倒しのような影響を与える可能性があります。
顎関節への負担や全身への影響
噛み合わせが不安定になると、顎関節に不自然な力がかかるようになります。顎関節症を引き起こすリスクが高まり、顎の不調が頭痛や肩こり、首の痛みなど、全身の不調につながることがあります。
顎関節は体全体のバランスを維持するための重要な部分であるため、噛み合わせの不安定さが全身に広がる可能性があります。これにより、日常生活での体調不良が慢性的に続くことになる場合もあります。
顔貌の変形と精神的な影響
歯を失った部分の顎の骨は、噛む刺激を受けなくなることで徐々に痩せていきます。これにより、歯茎や頬がへこみ、顔の輪郭が変化し、老けた印象を与えてしまうことがあります。
見た目の変化は、自信喪失につながり、人前で話すことや笑うことへの抵抗感が生まれることがあります。さらに、見た目が気になることで精神的なストレスを感じることが多く、社会的な不安や対人関係に影響を与えることもあります。
まとめ
奥歯をインプラントにすることには、多くのメリットとデメリットがあります。メリットとしては、天然の歯に近い噛み心地や咀嚼力の回復、周囲の歯に負担をかけない点、顎の骨の吸収を防げる点などが挙げられます。審美性の向上や、高い安定性、違和感の少なさも魅力です。長期的に安定した治療結果を得られる点も、インプラント治療の大きな利点です。
一方で、デメリットも存在します。治療費が高額であること、治療期間が長いこと、外科手術が必要であることなど、治療を受ける前にしっかりと理解しておくべきポイントがあります。また、インプラント歯周炎やアレルギー反応、噛み合わせ調整の難しさといったリスクにも注意が必要です。
奥歯のインプラント治療を受ける前には、歯科医師の経験や技術、治療の詳細な説明、他の治療法との比較など、十分に情報を集め、納得したうえで決断することが大切です。インプラント治療を適切に受けることで、食生活や健康を大きく改善できる可能性がありますが、慎重な選択が求められます。
監修者 山田 嘉宏(やまだ よしひろ)
医療法人社団隆嘉会 ソレイユデンタルクリニック 理事長
1990年 昭和大学歯学部 卒業
1990~1992年 東京医科歯科大学補綴科 勤務
1992~1993年 茨城県友部歯科診療所 勤務
1993~1999年 品川区共立歯科 分院長 勤務
1999~2003年 よしひろ歯科クリニック 開院
2003年 医療法人社団隆嘉会 よしひろ歯科クリニック 開院
2014年 医療法人社団隆嘉会ソレイユデンタルクリニック 開院
資格
・厚生労働省認定歯科医師臨床研修指導医
・日本口腔インプラント学会専門医
・IDIA(国際歯科インプラント協会/旧 ADIA(アメリカ歯科インプラント協会))専門医/指導医
・DGZI(ドイツ口腔インプラント学会)専門医/指導医
・ISOI(国際口腔インプラント学会)専門医/指導医
・ICOI(国際口腔インプラント学会)認定医
・日本臨床歯周病学会歯周病認定医
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